こちらの記事は令和元年11月20日に大幅に加筆修正いたしました。

障害年金と就労

精神疾患や発達障害で障害年金を受給されている方から頻繁にいただく質問があります。

「働いたら障害年金は停止もしくは減額になりますか?」

今回の記事では障害年金の認定基準「等級判定ガイドライン」等の内容を交えながら、障害年金と就労の関係について解説していきます。

障害認定基準を見てみましょう

まずは、障害年金の認定基準を確認してみましょう。

等 級障 害 の 状 態 の 基 本
1級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。
2級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。
3級
※厚生年金保険のみ
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については 、第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)

噛み砕くと、以下のようになるでしょう。

1級 ➡ 労働はできず、ほとんど寝たきり。日常生活には他人のサポートが必須。

2級 ➡ 労働はできず、日常生活にも著しい支障があり、多くの事に他人のサポートが必要。

3級 ➡ 労働に制限やサポートが必要で。日常生活にも支障があり、時により他人のサポートが必要。

 

この内容から考えると、2級以上は働けないこと、3級は制限のかかる働き方をしていることが条件になってきます。

ですから、初診日の時点で国民年金と厚生年金のどちらに加入しているか、が一つの分かれ道になってきます。

では、ここからは初診日に加入している年金制度ごとに分けて、解説していきます。

初診日時点で厚生年金加入の方の場合

初診日に厚生年金加入の方の場合、「仕事をしていて3級に該当するか?」という質問をよくいただきます。

障害認定基準から考えると、3級は「労働に制限やサポートが必要な状態」です。

では、「労働に制限やサポートが必要な状態」とはどんなものでしょうか?

明文化はされていませんので経験上のお話になってしまいますが、「就労支援」「障害者雇用」がこれに当たることが多いです。

ただし、たとえ障害者雇用であっても給与が生活を成り立たせる上で十分な金額であったり、簡単な援助のみで就労が可能な状態であれば、3級に該当しないこともあります。

逆に、就労支援や障害者雇用であっても、就労上の配慮が手厚く、周囲のサポートなしでは就労が難しいような状態であれば2級に該当する場合もあります。(もちろん日常生活にも著しい支障があることも条件になります。)

ですので、ご自身の就労条件を確認の上で、障害認定基準に該当しそうかを判断して頂ければよいのではないでしょうか。

 

障害基礎年金の方の場合

障害基礎年金の場合、上でも書きましたが「労働ができないこと」が条件となります。

ですので、働いていると障害年金が受給できない可能性は高くなります。

但し、障害認定基準や等級判定ガイドラインにある以下の記載から考えると、条件が揃えば受給できる場合もあります。

①障害認定基準の記載内容

就労について以下のように書かれています。

現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分に確認したうえで日常生活能力を判断すること。

②等級判定ガイドラインの記載内容

「等級判定ガイドライン」の中には、就労している場合でも2級以上の可能性を検討する場合の例が示されています。

※日常生活に著しい支障があることが前提となります。

 考慮すべき要素具体的な内容例
精神疾患、発達障害、知的障害の共通事項〇相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。

・就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)および障害者雇用制度による就労については、1級又は2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。

・障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営、家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障碍者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。

精神障害の場合〇安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況を踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
発達障害の場合〇仕事の内容がもっぱら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
〇執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する。・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、執着が強く、臨機応変な対応が困難であること等により、常時の管理、指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。
〇仕事場での意思疎通の状況を考慮する。・一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられること等により、常時の管理、指導が必要な場合には、2級の可能性を検討する。

あくまでも「検討する」とされていますので、かならず2級になるという条件ではありませんが、これらの例示に該当する場合には仕事をしていても障害基礎年金を受給できる可能性があるということになります。

 

しかしながら、この例示もあくまで例示に過ぎず、文言もなかなかに曖昧(例えば「仕事の内容が保護的な環境下」に当てはまるのはどんな仕事なのか?など)であるため、実際に手続きをして審査結果が届くまでは就労によりどのような審査をされるか誰にもわからないというのが正直なところです。

 

審査機関は就労状況をどこで確認するのか?

では、審査機関はこの就労の状況をどのように確認しているのでしょうか?

以下の3点から判断されているものと考えます。

①診断書

1つ目は診断書内の就労に関する記載です。

記載される内容は以下です。

〇勤務先がどれに該当するか?(一般企業・就労支援施設・その他)

〇雇用体系がどれに該当するか?(障害者雇用・一般雇用・自営・その他)

〇勤続年数はどれくらいか?(〇年△か月)

〇仕事の頻度はどれくらいか?(週にor月に◇日)

〇ひと月の給与はどれくらいか?(○○○円程度)

〇仕事の内容がどのようなものか?

〇仕事場での援助の状況や意思疎通の状況はどのようなものか?

診断書は医師に記載をしてもらうものですから、日頃の診察を受ける中で就労の状況やその内容、給与の金額、どういった援助を受けているのか、どのような点で困っているか等を正しく医師に伝えておくことは非常に重要になります。

②病歴就労状況等申立書

もう一つの判断材料は、請求者本人が作成する「病歴・就労状況等申立書」です。

この書類は、発病から請求日までの生活歴および就労歴を記載します。

また、請求時点での就労状況を(さかのぼって請求する場合は認定日時点の就労状況も)詳しく記載します。

審査に影響する書類ですから、就労について正確に記載する必要があります。

例えば・・・

〇就労している場所の種類(一般企業・就労支援施設・その他)

〇雇用体系(障害者雇用・一般雇用・自営・その他)

〇仕事の頻度(週にor月に◇日)

〇仕事の内容がどのようなものか?

〇仕事場での援助の状況

例えば、障害者雇用で就労していたにも関わらず一般企業で一般雇用で就労していたと捉えられるような記載をしてしまった場合には、等級に影響が出てしまう可能性があります。

また、十分な援助を受けて就労していた事実があるにも関わらず、そのことを記載しなければ、審査で不利に働く可能性もあります。

ですから、就労に制限があるのであれば、審査機関に自身の就労状況が正確に伝わるような記載が必要になります。

但し、絶対に事実を曲げることはせずに、真実だけを書いてくださいね!

③厚生年金の記録

最後の一つとして、日本年金機構が把握している厚生年金の加入歴からも就労状況の判断されると思います。

日本年金機構のデータには、いつからいつまで、どこの会社で、いくらくらい給与(賞与)をもらっていたか等の情報が入っています。簡単に書くと以下のような記録です。

H29.4.1 ~ H29.10.1 A株式会社 標準報酬 200

H30.1.1 ~ H31.1.1   B株式会社 標準報酬 180

R01.2.1 ~        C株式会社 標準報酬 150

この記録から、「現在、C株式会社で月15万円程度もらいながら仕事をしている」ということはわかります。

しかし、A~Cという会社が一般企業なのか就労支援なのか、一般雇用なのか障害者雇用なのか、週に何時間くらい働いて、どのくらいの頻度で(障害の影響で)欠勤しているのか等を把握することは出来ません。

ですので、障害者雇用や就労支援事業所で働いているのであれば、「診断書」や「病歴就労状況等申立書」の中で、事実を記載する(してもらう)ことが大切になります。

 

最後に

ここ最近、障害年金と就労に関しては本当にたくさんのお問合せを頂きます。回答としてはこの記事に書いたような内容をお話させて頂いています。

しかしながら、就労が審査結果にどの程度影響するかの判断は、実際にお手続きをして審査結果が届くまで誰にも分らないというのが正直な現状です。

ですから、できる限り就労の実態が審査機関に届くような書類を用意して手続きをすることが非常に大切になります。

 

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執筆者プロフィール

玉置 伸哉(社会保険労務士)

1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。

アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。

札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。

2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。

2019年2月、北海道障害年金相談センター開設。(TAMA社労士事務所開業)

障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。

また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。

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