診断書を記載する医師

精神疾患や発達障害により、障害年金を申請するときに使用する診断書の記載事項の中には、「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」という項目があります。

これらの項目は障害年金の審査機関が、相談者の日常生活の能力や障害による支障の程度を判断する上で非常に重要な項目になります。

まずは、どのようなものなのか、実物を見てみましょう。

実際の診断書の内容を確認

<日常生活能力の判定>

日常生活能力の判定

<日常生活能力の程度>

日常生活能力の程度

※精神の障害用の診断書全体はこちらからご確認いただけます。(これらの項目は裏面の上の方にあります。)

2つの項目の関係

この2つの項目はどちらも「日常生活能力」に関するものです。

では「判定」と「程度」でどう違うのでしょうか?

これら2つの関係については以下のように示されています。

日常生活能力の判定日常生活の7つの場面における(障害による)制限の度合いを、それぞれについて具体的に評価するもの。
日常生活能力の程度「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における(障害による)制限の度合いを包括的に評価するもの。

ですので、日常生活上の主な場面を7つに分けて細かく評価するのが「判定」、それらを含めて全体像を見て評価するのが「程度」となります。

また、どちらも単身でかつ支援がない状況で生活をした場合を想定した日常生活能力を評価し記載してもらうこととされています。

たとえ単身生活ではなかったり(サポートをしてくれる家族と同居している場合等)、施設やグループホームに入居していたりする場合にも、それらの状況ではなく単身生活を想定して記載してもらう必要があります。

この点は非常に重要ですので、ぜひ覚えておいていただけたらと思います。

 

それでは、それぞれの項目について、詳しく見ていきます。

日常生活能力の判定

「日常生活能力の判定」は、医師が患者の生活上の7つの能力(「適切な食事」「身辺の清潔保持」「金銭管理と買い物」「通院と服薬」「他人との意思伝達及び対人関係」「身辺の安全保持及び危機管理」「社会性」)について、次のような4段階で評価し、記載します。

①できる

②自発的にできるが(おおむねできるが)時には助言や指導を必要とする

③自発的かつ適正に行うことはできないが、助言や指導があればできる

④助言や指導をしてもできない若しくは行わない

では、①「できる」とはどんな状況でしょうか。また、②と③の違いはどのようなものでしょうか。

それぞれについて、診断書を作成する医師向けに作成された「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」で例示されている内容を紹介していきます。

※前提として、身体機能の障害に起因する能力の制限(例えば下肢麻痺による歩行障害等)は、診断書作成上の評価の対象とはなりません。

※「できる」とは、日常生活及び社会生活を行う上で、他者による特別な援助(助言や指導)を要さない程度のものとされています。また、「行わない」とは介護者に過度に依存して自分でできるのに行わない場合や、性格や好き嫌いなどで行わないことは含まれません。

(1)適切な食事
できる栄養バランスを考え適当量の食事を適切な時間にとることができる。(外食、自炊、家族・施設からの食事提供などは問わない)
自発的にできるが時には助言や指導を必要とするだいたいは自主的に適当量の食事を栄養バランスを考え適切な時間にとることができるが、時に食事内容が貧しかったり不規則になったりするため、家族や施設からの提供、助言や指導を必要とする場合がある。
自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる1人では、いつも同じものばかりを食べたり、食事内容が極端に貧しかったり、いつも過食になったり、不規則になったりするため、経常的な助言や指導を必要とする。
助言や指導をしてもできない若しくは行わない常に食事へ目を配っておかないと不食、偏食、過食などにより健康を害するほどに適切でない食行動になるため、常時の援助が必要である。

※嗜癖的な食行動(たとえば拒食症や過食症)をもって「食べられない」とはされません。

(2)身辺の清潔保持
できる洗面、整髪、ひげ剃り、入浴、着替えなどの身体の清潔を保つことが自主的に問題なく行える。必要に応じて(週に1回くらいは)、自主的に掃除や片づけができる。また、TPO(時間、場所、状況)に合った服装ができる。
自発的にできるが時には助言や指導を必要とする身体の清潔を保つことが、ある程度自主的に行える。回数は少ないが、だいたいは自室の清掃や片付けが自主的に行える。身体の清潔を保つためには、週1回程度の助言や指導を必要とする。
自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる身体の清潔を保つためには、経常的な助言や指導を必要とする。自室の清掃や片付けを自主的にはせず、いつも部屋が乱雑になるため、経常的な助言や指導を必要とする。
助言や指導をしてもできない若しくは行わない常時支援をしても身体の清潔を保つことができなかったり、自室の清掃や片付けをしないか、できない。
(3)金銭管理と買い物
できる金銭を独力で適切に管理し、1か月程度のやりくりが自分でできる。また、1人で自主的に計画的な買い物ができる。
おおむねできるが時には助言や指導を必要とする1週間程度のやりくりはだいたい自分でできるが、時に収入を超える出費をしてしまうため、時として助言や指導を必要とする。
助言や指導があればできる1人では金銭の管理が難しいため、3~4日に一度手渡して買い物に付き合うなど、経常的な援助を必要とする。
助言や指導をしてもできない若しくは行わないもっているお金をすぐに使ってしまう等、金銭の管理が自分ではできない、あるいは行おうとしない。

※行為嗜癖(ギャンブル依存など)による浪費や強迫的消費行動については、こちらの評価には反映されません。

(4)通院と服薬
できる通院や服薬の必要性を理解し、自発的かつ規則的に通院・服薬ができる。また、病状や副作用について、主治医に伝えることが出来る。
おおむねできるが時には助言や指導を必要とする自発的な通院・服薬はできるものの、時に病院に行かなかったり、薬の飲み忘れがある(週に2回以上)ので、助言や指導を必要とする。
助言や指導があればできる飲み忘れや飲み方の間違い、拒薬、大量服薬をすることがしばしばあるため、経常的な援助を必要とする。
助言や指導をしてもできない若しくは行わない常時の援助をしても通院・服薬をしないか、できない。
(5)他人との意思伝達及び対人関係
できる近所、仕事場などで、挨拶など最低限の櫃付き合いが自主的に問題なくできる。必要に応じて、誰に対しても自分から話せる。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができる。
おおむねできるが時には助言や指導を必要とする最低限の人付き合いはできるものの、コミュニケーションが挨拶や事務的なことにとどまんりがちで、友人を自分からつくり、継続して付き合うには、時として助言や指導を必要とする。あるいは、他者の行動に合わせられず、助言がなければ、周囲に配慮を欠いた行動をとることがある。
助言や指導があればできる他者とのコミュニケーションがほとんどできず、近所や集団から孤立しがちである。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができず、あるいは周囲への配慮を欠いた行動がたびたびあるため、助言や指導を必要とする。
助言や指導をしてもできない若しくは行わない助言や指導をしても他社とのコミュニケーションができないか、あるいはしようとしない。また、隣近所・集団との付き合い・他者との協調性がみられず、友人等との付き合いがほとんどなく、孤立している。

※1対1や集団の場で、他人の話を聞いたり、自分の意思を相手に伝えたりするコミュニケーション能力や他人と適切に付き合う能力に着目して評価を行って頂くことになります。

(6)身辺の安全保持及び危機対応
できる道具や乗り物などの危険性を理解・認識しており、事故等がないよう適切な使い方・利用ができる(例えば、刃物を自分や他人に危険がないように使用する、走っている車の前に飛び出さない、など)。また、通常と異なる事態となった時(例えば火事や地震など)に他人に援助を求めたり指導に従って行動する等、適正に対応することができる。
おおむねできるが時には助言や指導を必要とする道具や乗り物などの危険性を理解・認識しているが、時々適切な使い方・利用ができないことがある(例えば、ガスコンロの火を消し忘れる、使用した刃物を片付けるなどの配慮や行動を忘れる)。また、通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり指示に従って行動できない時がある。
助言や指導があればできる道具や乗り物などの危険性を十分に理解・認識できておらず、それらの使用・利用において、危険に注意を払うことができなかったり、頻回に忘れてしまう。また、通常とは異なる事態となった時に、パニックになり、単に援助を求めたり、指示に従って行動する等、適正に対応することが出来ないことが多い。
助言や指導をしてもできない若しくは行わない道具や乗り物などの危険性を理解・認識しておらず、周囲の助言や指導があっても、適切な使い方・利用ができない、あるいはしようとしない。また、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めたり、指示に従って行動する等、適正に対応することができない。

※自傷(リストカットなどの行為嗜癖的な自傷を含む。)や他害が見られる場合は、自傷・他害行為をこちらの項目の評価対象に含めないこととされております。(これらの行為が見られる場合には、別の欄に記載することとされています。)

(7)社会性
できる社会生活に必要な手続き(例えば行政機関の各種届出や銀行での金銭の出し入等)や公共施設・交通機関の利用にあたって、基本的なルール(常識化された約束事や手順)を理解し、周囲の状況に合わせて適切に行動できる。
おおむねできるが時には助言や指導を必要とする社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用について、習慣化されたものであれば、各々の目的や基本的なルール、周囲の状況に合わせた行動がおおむねできる。だが、急にルールが変わったりすると、適正に対応することができないことがある。
助言や指導があればできる社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、各々の目的や基本的なルールの理解が不十分であり、経常的な助言や指導がなければ、ルールを守り、周囲の状況に合わせた行動ができない。
助言や指導をしてもできない若しくは行わない社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、その目的や基本的なルールを理解できない、あるいはしようとしない。そのため、助言・指導などの支援をしても、適切な行動ができない、あるいはしようとしない。

日常生活能力の程度

日常生活能力の程度は、上記「日常生活能力の判定」の7項目を含めて日常生活全体を見て、障害の影響を受けた状態で日常生活を送っていく力がどの程度あるのか、どの程度の援助・指導が必要なのか、を医師が判断します。

それぞれ具体的にどのような状態であるかは、実際の診断書に記載されておりますので、ここでは割愛します。

 

あくまでも医師が評価するもの

これらの2つの項目は、あくまでも医師が患者さんを診て評価します。

ですので、日頃から診察を受ける中で自身の生活状況で困っていることや障害の影響でできなくなっていることを医師に伝えておくことが重要となります。

医師に現状を伝える時には、絶対に本当のことだけを伝えるようにしてください。

 

なぜこれらの項目が重要なのか

精神障害による障害年金の審査では、平成28年9月から「精神の障害にかかる等級判定ガイドライン」(全文はこちら)が審査に適用されています。

あくまで障害等級を審査する上での1つの要素に過ぎませんが、重要であることは確かです。(精神疾患で障害年金を申請する場合のポイントはこちらの記事でご確認ください。)

「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」は以下の表のどこに当てはまるか、だいたい何級くらいの生活能力なのかを判断するために使用されます。

もちろん、必ずこの表のとおりになるわけではなく、診断書の記載内容を総合的に見て、障害等級が決定されます。

<等級判定ガイドライン>

<留意事項>

障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、ここの等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果と貼ることもあり得ることに留意して用いること、が記載されています。

<表の見方>(診断書の様式はこちら

①横軸の「程度」は、診断書の裏面右上にある「日常生活能力の程度」の5段階評価を指しています。

②縦軸の「判定平均」は診断書裏面左上にある「日常生活能力の判定」の4段階評価を軽い方から1〜4の数値に置き換え、その平均を算出したものです。

③障害基礎年金の場合は、「3級」を「2級非該当」に置き換えて考えます。

 

よく頂く質問とその回答

では、ここからはよく頂く質問とその回答を紹介していきます。

Q1、時期によって症状に波がある場合にはどうしたら良いでしょうか?

診断書を作成する医師向けに作成された「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」の中で、「日常生活能力の判定」や「日常生活能力の程度」の記載について、次のように書かれています。

診察時(来院時の)の一時的な状態ではなく、現症日以前1年程度での障害状態の変動について、症状の好転と増悪の両方を勘案した上で、当てはまるものをご判断下さい。

この記載の通り、症状に波がある場合には1年以内の病状を勘案して診断書を作成頂くことになります。

ですから、毎回の診察の中できちんとその時の症状やそれによる生活への影響を医師に正確に伝えておくようにすると良いでしょう。

Q2、医師に自分の状態を伝えることが苦手です。どうしたら良いでしょうか。

精神障害の影響でコミュニケーションが苦手で、自身の生活状況や病状をうまく医師に伝えられない、というご相談をよく頂きます。

この場合にお勧めしているのは、自身の状況を紙にメモして医師に渡す方法です。

但し、長々と書くのではなくシンプルにまとめて渡す。メモを読むお医者さんへの気遣いもぜひ忘れないで頂きたいと思います。

そして、何よりも事実だけを書くことを守ってください。

最後に

障害年金の手続きには必ず、医師が作成する診断書が必要になります。

その診断書の内容には日常生活の状態を記載して頂く箇所が存在します。が、医師は四六時中、患者さんの生活を見ることはできませんので、普段から正確に日常生活のこと(障害により困っていること・できなくなったこと等)を伝えておくことが大切です。

この記事の内容が少しでも、実態通りの診断書作成のお役に立ちましたら嬉しく思います。

 

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執筆者プロフィール

玉置 伸哉(社会保険労務士)

1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。

アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。

札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。

2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。

2019年2月、北海道障害年金相談センター開設。(TAMA社労士事務所開業)

障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。

また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。

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