年金保険料を納めるのが難しい場合~納付免除制度~
国民年金の被保険者(第1号被保険者)は、毎月の保険料を納める必要があります。
しかし、失業などの理由により、保険料を納めることが難しい場合もあります。
このような場合に利用できる制度として「国民年金保険料免除制度」があります。
今回は、この「国民年金保険料免除制度」について説明していきます。
障害年金を受給するための3つの条件である「年金保険料の納付要件」(確認はこちらから)は、以下のいずれかの条件を満たすことが必要でした。
・20歳から初診日のある月の前々月までの全期間のうち3分の2以上を納付または免除していること
・初診日の前々月から前1年間に未納がないこと
この保険料納付要件を確認するときに、納付と同等に扱われるのが免除です。
<要注意>全額免除以外の場合は、減額された保険料額をきちんと納付していることが条件になります。
ケガや病気で障害を負ってしまった時に、(本当は免除を利用できた期間なのに)保険料が未納で障害年金の請求権が無い、という事態を防ぐことが出来るかもしれないので、ぜひ一度確認して頂ければと思います。
もくじ
保険料免除とは
本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合に、保険料の納付が免除される制度です。
所得に応じて、全額免除(法定免除、申請免除)、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があります。
保険料免除を受ける要件
それぞれの該当要件として、原則的なものは以下のようになっています。
単身の方以外は、配偶者や世帯主の所得も含めて考えます。
免除の種類 | 該当要件(原則的なもの) | |
全額免除 | 法定免除 | ・生活保護法による生活扶助を受給している ・障害年金1級もしくは2級に該当している |
申請免除 | 前年所得(1~6月に申請する場合は前々年所得)が次の計算で得られた金額以下である場合。 (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 | |
4分の3免除 | 前年所得(1~6月に申請する場合は前々年所得)が次の計算で得られた金額以下である場合。 78万円+扶養親族等の数×38万円 | |
半額免除 | 前年所得(1~6月に申請する場合は前々年所得)が次の計算で得られた金額以下である場合。 118万円+扶養親族等の数×38万円 | |
4分の1免除 | 前年所得(1~6月に申請する場合は前々年所得)が次の計算で得られた金額以下である場合。 158万円+扶養親族等の数×38万円 |
※表中の「38万円」は扶養親族の年齢等で変わる場合があります。
手続き
免除を受けるには、申請書を提出し、承認を受ける必要があります。
申請先は、住所のある市区町村役場の国民年金担当の窓口です。
手続きに必要な基本的な書類は以下になります。
①年金手帳 または 基礎年金番号通知書(必須)
②前年(または前々年)所得を証明する書類
③所得の申立書(所得についての税の申告を行っていない場合)
免除のメリット
年金保険料の免除を受けることのメリットとして大きいのは、将来の老齢年金の給付額に反映されることです。
未納の場合には、ただただ年金が減額されることになりますが、(条件に該当して)保険料の免除を受けた場合には、以下のように将来の老齢年金の金額に反映されます。
免除の種類 | 該当要件(原則的なもの) |
全額免除 | 保険料の半額を支払ったこととして扱われます。 |
4分の3免除 (4分の1納付した場合) | 保険料の8分の5を支払ったこととして扱われます。 |
半額免除 (半額納付した場合) | 保険料の4分の3を支払ったこととして扱われます。 |
4分の1免除 (4分の3納付した場合) | 保険料の8分の7を支払ったこととして扱われます。 |
全額免除の場合には、保険料を支払うことなく保険料の半分(税金分)を支払ったこととして扱われます。
全額免除以外の場合も、自身で支払った分に税金分が加算されて将来の年金額に反映されます。
※免除後の残額をきちんと納付した場合に限ります。(4分の1免除の場合、残りの4/3の納付が必要。)
所得が低く年金保険料が払えずに未納にしてしまっている場合には、免除申請を検討してみることをお勧めいたします。
もう一つのメリットとして、保険料の追納ができることです。
追納とは、免除を受けた年金保険料を後から納めることが出来る制度です。最大で過去10年分の保険料を追納することが出来ます。
未納の場合は、最大でも過去2年分しか後から納めること(「後納」という)が出来ません。
後々になって「将来の年金額を増やしたい」と思ったときに、納められる年金保険料の額も違ってきますので、免除をしておくことがのちのち役に立つかもしれません。
免除のデメリットとその対処方法
免除を行うことで、所得の低い等の理由がある期間、年金保険料による負担を減らすことが出来る一方で、将来受給する老齢年金の金額が、保険料を満額納付した場合と比べて少なくなってしまいます。
仮に、20才から60才までの間、全期間を満額納付したAさんと、全期間を全額免除したBさんの受給する老齢基礎年金の金額を比較すると以下のようになります。
Aさん | 781,700円(年額) |
Bさん | 390,800円(年額) |
このように、全期間を全額免除した場合には、受給額が満額納付の半分になってしまいます。
月額にするとおよそ32,500円ほど。この金額で生活を維持するのはなかなか困難でしょう。
これを避けるための対処法として、上でも書いた「追納」があります。
生活に少しでも余裕が生まれた時に追納をしておくことで、将来の老齢年金の金額を増やすことが出来ます。
将来の不安を少しでも減らす方法として、検討してみてはいかがでしょうか。
障害年金1級もしくは2級を受給中の場合
障害年金の1級もしくは2級を受給中は法定免除になります。
保険料を納付する必要はなく、将来の老齢年金の金額には保険料の2分の1を納付した期間として反映されます。
しかしながら、多くの場合、障害年金は有期認定で数年おきに更新があります。
もしも老齢年金を受給する年齢になった以降に、障害の状態が改善して障害年金が停止になってしまった場合、受給する年金を老齢年金に変更することになります。
そんな時に、法定免除により2分の1納付として扱われていた期間が多いほど、老齢年金の金額は低くなってしまいます。
ですから、障害年金の受給中であっても、将来的に障害の程度に改善の可能性がある場合には、保険料の追納を検討してみるのも良いのではないでしょうか。
最後に
失業などの理由により年金保険料の納付が難しい場合が生じた場合、ただただ未納の状態を継続するのではなく、納付免除などの制度を利用することのが大切です。
いざ障害年金の申請をしようとしたときに、本来免除を受けられたにも拘わらず、その手続きを怠ったがために保険料納付要件が満たせず請求権が無い、という事態にもなり兼ねません。
保険料納付が難しい方はぜひ一度、市区町村役場に相談してみてください。
こちらの内容をお読みいただいた方で、「障害の影響で自身で保険料納付期間の確認に行けない。」「自分で確認しようとしたがよくわからなかった。」等のお悩みがございましたら、ぜひ一度、TAMA社労士事務所にご相談いただければと思います。
初回のご相談は無料です。
また、着手金1万円、医療機関に支払う診断書等の作成料(実費)、住民票等の取得料金(実費)以外はご相談者様が障害年金を受給できた場合のみ料金が発生する形になっています。
安心してご相談ください。
初回の相談は無料です。 |
執筆者プロフィール 玉置 伸哉(社会保険労務士) 1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。 アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。 札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。 2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。 2019年2月、TAMA社労士事務所を開業。 障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。 また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。 詳しいプロフィールはこちらから |