障害年金を受給できる状態とは(がんの場合)

がん・ピンクリボン

このところCM等でも耳にしますが、日本人の2人に1人はがん(悪性新生物)にかかり、3人に1人ががんで亡くなるという統計があります。

2人に1人ですから、他人事とはいえず、いつ自分事になってもおかしくない病気といえるでしょう。

あまり認知度が高くないようですが、この「がん(悪性新生物)」は障害年金の対象傷病となっています。

早期発見・早期治療により事なきを得る方も増えてきているようですので「がん」を発症したことをもってすぐに障害年金を受給できるわけではありません。

が、病状が進行してしまい、生活や労働に影響が出てしまった時には、障害年金を受給できる可能性が出てきます。

 

障害年金を受給するための大切な条件として「初診日要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」の3つがありました。(詳しくはこちら

この記事では、がんの場合、どのような状態になったときに障害年金を受給できるのか「障害状態要件」について解説していきます。

障害認定基準

がんで障害年金を受給する場合の基準として、「国民年金・厚生年金 障害認定基準」(全文はこちら)の悪性新生物の障害の基準には以下のように書かれてます。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることがを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

認定要領~認定のされ方~

ここからは、認定基準に示されている内容をより具体的に例示している認定要領を見ていきます。

障害の程度

障害の状態

 

1級

著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

<一般状態区分表>

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を加えることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働やざ行はできるもの

例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

この一般状態区分表は診断書の中に記載されており、がんが日常生活・就労に与える支障を判断する項目として、重視されています。

もちろん一般状態区分表のみで判断されるのではなく、診断書に記載されている検査の結果や数値、自覚症状・他覚症状なども参考にして、総合的に等級が決定されます。

がんの申請で気をつけるべき点

がん(悪性新生物)は全身のほとんどの臓器に発生するため、現れる症状も様々で、それにより生じる障害や日常生活・就労に対する支障は様々で多岐にわたります。

併せて、抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療の副作用も、日常生活や就労に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。

これらの事実を審査機関にきちんと伝えるため、診断書や病歴就労状況等申立書の内容は非常に重要になります。

ここでは、書類作成上のポイントを書いてみたいと思います。

①診断書はできるだけ細かく書いてもらう。

がん(悪性新生物)で障害年金を申請する場合、がん専用の診断書というものは存在せず、「その他の障害用の診断書」を使用することになります。

しかしながら、この「その他の障害用の診断書」は名前の通り、他の多くの傷病(例えば、HIVや白血病など)での申請に使用できるように作られているので、がん(悪性新生物)の症状に関して記載できる欄は限られています。

そのため、使える欄を活用し、検査結果、治療の内容・その副作用、自覚症状などを具体的に細かく記してもらうことが重要になります。

例えば、以下のようなものを書いていただくのが良いでしょう。(もちろん症状として実際に現れているものだけを記載してもらってください。)

検査結果

腫瘍マーカー検査や組織診断検査、超音波検査、X線CT検査、MRI検査、血管造影剤検査、内視鏡検査など

治療の内容や副作用

放射線治療の頻度、化学療法で使用している薬剤・実施頻度・1回あたりの投与量、その副作用(吐き気、全身倦怠感、抜毛など)、過去に使用していた薬剤の投与量、使用していた期間、頻度など

自覚症状

衰弱、全身倦怠感、発熱、痛み、しびれ、感覚の麻痺、貧血、吐き気、下痢、嘔吐など

その他

転移があれば転院について、手術歴、人工臓器の有無と手術日など

※自身の症状について詳細な記載を頂くことになりますので、余命やステージについての記載もされることがありますので、その点は事前に覚悟する必要があると思います。

②症状によって、診断書は複数枚準備する

上でも書いた通り、がん(悪性新生物)での障害年金申請には「その他の障害用の診断書」を使用します。

ですが、この診断書だけでは、多岐にわたるがん(悪性新生物)の症状を表現するのには不十分である場合も多くあります。

そのため、がん(悪性新生物)により著しく症状が出ている箇所があれば、それを示すのにふさわしい診断書を準備の上で申請を行うのも有効な手段になるでしょう。

以下に一例を挙げておきます。

がんの種類など

診断書の種類

肺がん

呼吸器の障害用の診断書

咽頭がん、舌がん

聴覚・そしゃく・嚥下機能用・言語機能の障害用の診断書

骨転移に伴うしびれ、麻痺、関節症状

肢体の障害用の診断書

腎臓がん、肝がん

腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用の診断書

③病歴就労状況等申立書もできる限り細かく書く

請求者本人が作成する病歴就労状況等申立書に関しても、病状がしっかりと審査機関(日本年金機)に伝わるように細かく記載することが重要になります。

病歴就労状況等申立書の基本的な書き方については、こちらの記事でご確認頂ければと思います。

基本的な書き方に加えて、がんでの障害年金申請の病歴就労状況等申立書を作成するときに、私が個人的に大切にしているポイントを挙げていきたいと思います。

ⅰ.治療の内容は詳細に書く。

医師に診断書を作成頂くときのポイントと重複しますが、治療の内容はできるだけ詳細に記載します。

いつ頃どのような症状が出て、どのような治療を受けたのか、それに伴って入院はしたのか、どのような副作用があるのか等を詳細に記載していきます。

また、治療の方法や使用する薬剤が変わった時には、上記に加えて、以前の治療と比べて症状がどうなったのか、違った副作用が出ていないか、日常生活において変わったことはなかったか等も記載するようにしています。

ⅱ.日常生活における支障・困っていることを詳細に書く。

診断書の記入欄の数や範囲を考えると、日常のこまごまとした支障や困っていることを記載してもらうのには限界があると思います。

ですので、請求者本人が作成する病歴就労状況等申立書の中で詳細に記入し、審査機関に伝えることが重要です。

例えば、家族からの介助の内容や家事代行事業所などのサービス利用状況等を書くことも一つの有効な手段だと思います。(もちろん実際に行われているものだけを記載してください。)

細かいですが、衰弱のレベルの表現として「瓶のふたを開けられない」だとか「買い物が少量ずつしかできない」など、日常生活における細かい支障を具体的に書いてみるのも良いのではないかと考えています。

ⅲ.最も重要なのは診断書との整合性

最後に最も重要だと思っていることを書きます。診断書との整合性です。

たとえば、診断書に記載のない症状を病歴就労状況等申立書に記載した場合、その症状はないものとして審査が行われる可能性があります。

ですから、診断書の内容と病歴就労状況等申立書の内容を照らし合わせて、しっかりと確認する必要があります。

実際に感じている自覚症状についての記載が診断書に無い場合には、診断書を作成した医師にその旨を伝え、医師がその症状を認める場合には追記してもらう等の対応が必要になるでしょう。

最後に

上にも書いた通り、がんは全身のあらゆる部に発生し、様々な症状・障害を呈します。

そのため、障害年金の申請上でも、お一人お一人の発症部位や症状、生活への影響などをしっかりと反映した申請書類を作成して申請を行うことがが重要になります。

「自分の場合はどうだろう?」「病歴就労状況等申立書づくりが不安」「衰弱等の症状があって年金事務所に行けない」等のお悩みがございましたら、ぜひ一度、TAMA社労士事務所にご相談いただければと思います。

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また、着手金1万円、医療機関に支払う診断書等の作成料(実費)、住民票等の取得料金(実費)以外は成功報酬制(ご相談者様が障害年金を受給できた場合のみ料金が発生する形)になっています。

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執筆者プロフィール

玉置 伸哉(社会保険労務士)

1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。

アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。

札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。

2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。

2019年2月、TAMA社労士事務所開業。

障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。

また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。

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