初診日の判断に重要な「相当因果関係」とは
こんにちは。社会保険労務士の玉置です。
今回のテーマは、初診日がいつなのかを判断する上で非常に重要になる「相当因果関係」についてです。
では、「相当因果関係」とは何か?
簡単に説明すると「過去に医療機関に受診していた傷病Aと、現在かかっている傷病Bとの間に関連があるかどうか」ということです。
ここでいう「関連がある」というのは「傷病Aにならなければ、傷病Bにはならなかった」という関係をいいます。
もし、この相当因果関係が認められた場合、傷病Aと傷病Bは同一の傷病として扱われることになります。
では、傷病Aと傷病Bが同一傷病として扱われることになるとどんなことが起こるか?
それは「傷病Bで障害年金を請求する場合の初診日が傷病Aの初診日になる」ということが起こります。
複数傷病がある場合には、「相当因果関係のある傷病の中で一番最初にかかった傷病の初診日」が初診日になります。
もくじ
なぜ怖い?
なんだ、そんなことか。
そう思われた方もいるかもしれません。が、以下のようなストーリーを想像してみてください。
3年前から医療機関で治療を受けている傷病Bでの障害年金請求を検討している方がいます。
医師に「30年前に傷病Aで医療機関に受診していたことがある」と告げたところ、「傷病Bとの間に相当因果関係がある」と診断されました。
この場合、障害年金請求上の初診日は30年前に傷病Aで初めて受診した日になります。
さぁ、30年前の初診日を証明できるでしょうか?
ちなみに、医療機関のカルテ保存義務は5年です。
お分かりいただけましたでしょうか?
「今かかっている傷病で障害年金をもらえる対象になったぞ」と思って調べてみたら、過去の傷病と関連があって初診日がはるか昔に…なんてことが起こり得るのです。
初診日の証明ができないとなると、障害年金を受給できる可能性は非常に低くなってしまうのです。
「相当因果関係あり」になる場合とは
まず、どういったものが「相当因果関係あり」と取り扱われるのでしょうか?
障害認定基準において、例示されているのは以下のような場合です。
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ここに例示されているのは、ほんの一例です。
書かれていないものは、医師の判断や病歴、症状などの様々な要因をもとに、ケースバイケースで判断されます。
「相当因果関係なし」になる場合とは
では、逆にどのようなものが「相当因果関係なし」と取り扱われるのでしょうか?
例示されているのは以下のような場合です。
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ここに例示されているものも、ほんの一例です。
書かれていないものはやはり、医師の判断や病歴、症状などの様々な要因をもとに、ケースバイケースで判断されます。
どういう傷病の方が特に注意すべきか
経験上、人工透析で障害年金を請求する方に非常に多いパターンです。
糖尿病の診断を受けてから人工透析を必要とする状態になるまでに相当な時間を要します。
また、この間、目立った自覚症状がないため受診をしなかった、という話もよく聞きます。
このような理由から、人工透析により障害年金を申請しようと思った時には初診のカルテが廃棄されているパターンが多くなり、最悪の場合には請求できないという結末を迎える方もいらっしゃるのです。
人工透析だけではありません。
症状が出始めてから、じわりじわりと症状が進行する傷病の場合には注意が必要です。
例外パターン〜社会的治癒〜
「相当因果関係あり」となった場合、必ず「相当因果関係のある傷病の中で一番最初にかかった傷病の初診日」が初診日になるのか、というと例外があります。
それは「社会的治癒」が認められる場合。
昔かかった傷病Aと現在の傷病Bには相当因果関係がある。しかし、傷病Aは一度、社会的に治っていると判断された場合です。
この場合には、傷病Bの初診日が障害年金請求上の初診日として扱われます。
「社会的に治ってる」って何?と思われた方も多いと思います。
これについての解説はまた次回。
「障害年金の申請を考えているが、請求傷病と大昔に医療機関にかかっていた病気との間に相当因果関係がありそうだ…判断できない」そんなお悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、TAMA社労士事務所にご相談ください。初回相談は無料です。