障害年金を受給できる状態とは(糖尿病の場合)

糖尿病の認定基準

近年、運動不足や食生活の変化・乱れなどにより、罹患する方が多くなっている糖尿病。

現在、日本人のうち300万人ほどが糖尿病により医療機関にかかっており、糖尿病の疑いが否定できない”糖尿病予備軍”も1,000万人以上いるといわれています。

早期に生活改善や適切な治療を行わないと後々重大な合併症を起こす可能性が高い病気であるにも関わらず、初期段階ではあまり自覚症状が無いために放置されがちな病気でもあるため、年々その患者数は増えているようです。

 

この記事では、そんな糖尿病を患ってしまった場合、どのような状態になったときに障害年金を受給できるのか「障害状態要件」について解説していきます。

(障害年金の3大要件「初診日要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」の確認はこちらから)

障害認定基準

糖尿病で障害年金を受給する場合の基準として、「国民年金・厚生年金 障害認定基準」(全文はこちら)の代謝疾患による障害の基準には以下のように書かれてます。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることがを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

認定要領~認定のされ方~

糖尿病で障害年金を申請する場合、原則として以下の条件に該当した場合に「3級」と認定するとされています。

この「3級」は障害厚生年金の対象者、つまりは初診日の段階で厚生年金に加入していた方のみが対象となりますので、初診日が20歳前であったり国民年金加入中であったりする方は糖尿病のみをもって障害年金を受給するのはなかなか難しいと言えるでしょう。

※ただし、以下の条件と比べより重度な状態であると認められた場合には、2級以上と認定される場合も稀にありますので、まずは以下の条件を確認してみてください。

<以下の3つの条件を満たすと原則3級と認定されます。>

①検査前に90日以上継続してインスリン治療を行っている。

②以下のいずれかに該当する。

(ア)内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時またh随時の結成Cペプチド値が0.3ng/mL未満。

(イ)意識障害により自己回復できない重症低血糖の所見が平均して月1回以上ある。

(ウ)インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上ある。

③一般状態区分表のまたはに該当する。

<一般状態区分表>

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を加えることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働やざ行はできるもの

例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、二中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

この一般状態区分表は診断書の中に記載されており、糖尿病が日常生活・就労に与える支障を判断する項目として、重視されています。

この一般状態区分表でエやオに該当し、それを裏付ける所見や検査数値なども併記されている場合には3級よりも上位等級に該当する場合もあります。

合併症がある場合には認定基準が違います

糖尿病は合併症として様々な症状につながる可能性を孕んでいます。

合併症がある場合、その症状が出ている部位に合った診断書を使用します。

それに合わせて、認定基準も変わってきます。

合併症認定基準
糖尿病性網膜症による眼の障害眼の障害の認定基準

糖尿病性壊疽による運動障害、神経障害

肢体の障害の認定基準
糖尿病性腎症(人工透析等)腎疾患による障害の認定基準

糖尿病の申請で気をつけるべき点

ここからは、糖尿病での申請の時に特に気をつけて頂きたいことをまとめていきます。

①何よりも初診日!

糖尿病は発症し初めて医療機関に受診してから、障害年金の基準に該当する症状に至るまでの間に相当程度の時間がかかります。そのため、いざ障害年金の申請を行おうと考えた時に、すでに医療機関がカルテを廃棄していたり、医療機関が廃業していたりして、初診日を証明できないということも多くあります。

また、Ⅰ型糖尿病の場合には若年期に発症される方も多く、20歳を迎えて障害年金の申請を行えるようになった時点で、初診の医療機関がカルテを廃棄していたり、最悪の場合には廃院していたりして、初診日を証明できないということも起こりえます。

 

過去の事例として多いのは、糖尿病から糖尿病性腎症や腎不全へと進行して人工透析を開始したため、いざ障害年金を申請しようとしたが、初診日の証明書類が準備できなかったために障害年金の申請を諦めたというケースです。

ちなみに人工透析施行中の方は原則「2級」と認定されることになっています。

ですから、初診日が証明できないがために障害年金を受給できないという事態を避けるためにも、糖尿病だと診断され食事療法や運動療法等を始めた時点で、初診日の証明をできる書類を取得しておくと良いでしょう。

たとえ、その後の経過が良く障害年金を申請せずに済んだとしても、転ばぬ先の杖として取得しておくと良いのではないかと個人的には考えております。

※初診日が証明できない場合の対処法はこちらの記事でご確認ください。

②病歴就労状況等申立書はしっかりと書く

状況等申立書を作成するときに、私が個人的に大切にしているポイントを挙げていきたいと思います。

ⅰ.治療の内容は詳細に書く。

治療の内容はできるだけ詳細に記載します。

インスリンによる治療を行っているのであれば、いつごろから行っているのか、注射ペースはどれくらいなのか、副作用(震えや眠気などの低血糖による症状の含む)などを書くと良いでしょう。

また、医師から食事を摂る上でどのような指導を受けているのか、運動はどの程度行っているのかなどを詳細に記載し、その食事療法や運動療法の結果として検査数値は改善しているのか、改善していないのか等をしっかりと記載するのが良いと思います。

ⅱ.日常生活における支障・困っていることを詳細に書く。

糖尿病の症状やインスリン注射による副作用が日常生活や就労にどのような支障を与えているかを具体的に記載しましょう。

例えば、「インスリンによる低血糖で起きていられる時間が〇時間程度に限られる」「疲労感や倦怠感から仕事を休むことが増えた」等の事実があれば、記載すると良いと思います。

ⅲ.最も重要なのは診断書との整合性

最後に最も重要なこと。それは、診断書との整合性です。

たとえば、診断書の一般状態区分表がイになっている方が、病歴就労状況等申立書に「一日の半分以上起きていられない」と書いたとします。

おそらく、病歴就労状況等申立書に書いた内容は、審査に反映されないでしょう。

ですから、診断書の内容と病歴就労状況等申立書の内容を照らし合わせて、しっかりと確認する必要があります。

実際に日常生活に起こっている支障と診断書の記載内容との間に相違がある場合には、診断書を作成した医師に相談する等の対応が必要になるでしょう。

最後に

合併症を伴わない糖尿病での障害年金申請は、上記の通り「3級」に認定されることがほとんどで、初診日が20歳前の方や国民年金加入中の方の場合、受給がなかなか難しいということが言えます。

しかしながら、上記の認定基準よりも明らかに症状が重く日常生活に著しい制限が必要である場合などには、2級以上の等級に該当する場合もありますので、「自分の場合はどうだろう?」と思われた方は自身の状態を一般状態区分表などに当てはめてみたり、場合によっては医師に確認してみたりするのも良いかと思います。

 

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執筆者プロフィール

玉置 伸哉(社会保険労務士)

1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。

アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。

札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。

2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。

2019年2月、TAMA社労士事務所開業。

障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。

また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。

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