障害年金を受給中に症状が悪化した場合~額改定請求~
障害年金を受給している方の等級は、基本的には更新(障害状態確認届※詳しくはこちら)までは変わることなく、その等級の年金の支給が継続されます。
また、更新によりそのままの等級で障害年金を受給し続けることが決定した場合、基本的には次の更新のタイミングまでその等級の障害年金を受給し続けることになります。
もしもこの間に、障害年金の等級が決定された時よりも症状が悪化してしまった場合、自分から請求手続きを行わない限り等級が変更されることはありません。
この「症状が悪化して上位の等級に該当するにいたったと思いますので審査してください」という請求手続きを「額改定請求」と言います。
こちらの記事では、障害年金の額改定請求について、方法や行う時期、注意点等について書いていきます。
もくじ
障害年金の額改定請求の必要書類
障害年金の額改定請求は、基本的には以下の書類を提出することで行うことが可能です。
・診断書
書類の数が少ないため一見簡単そうに見えます。
しかしながら、細心の注意を払って頂きたいポイントがあります。
最も注意して頂きたいポイントは請求するタイミングです。
額改定請求を行うことができる時期
障害年金の額改定請求は、原則、以下の日でなければ行うことができないという決まりがあります。
・障害年金の受給権が発生した日から1年を経過した日
・障害の程度の診査(例えば更新や前回の額改定請求)を受けた日から1年を経過した日
ですので、自身の受給権発生日等をしっかり確認して、すでに額改定請求を行える時期が来ているかどうかを確認する必要があります。
ただし、例外もあります。
平成26年以降、省令で定められた障害の状態が悪化したと認められるときには、1年を待たずに額改定請求が可能です。
●1年を経過しなくても額改定請求ができる場合
眼・聴覚・言語機能の障害 | |
1 | 両眼の視力の和が0.04以下のもの |
2 | 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの |
3 | 8等分した視標のそれぞれの方向につき測定した両眼の視野がそれぞれ5度以内のもの |
4 | 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの、かつ、8等分した視標のそれぞれの方向につき測定した両眼の視野の合計がそれぞれ56度以下のもの |
5 | 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの |
6 | 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの |
7 | 咽頭をすべて摘出したもの |
肢体の障害 | |
8 | 両上肢の全ての指を欠くもの |
9 | 両下肢を足関節以上で欠くもの |
10 | 両下肢の親指および人差し指または中指を欠くもの |
11 | 一上肢の全ての指を欠くもの |
12 | 両下肢の全ての指を欠くもの |
13 | 一下肢を足関節以上で欠くもの |
14 | 四肢または手指若しくは足指が完全麻痺したもの(脳血管障害または脊髄の器質的な障害よるものについては、当該状態が6月を越えて継続している場合に限る) ※完全麻痺の範囲が広がった場合も含む。 |
内部障害 | |
15 | 心臓を移植したものまたは人工心臓(補助人工心臓を含む)を装着したもの |
16 | 心臓再同期医療機器(心不全を治療するための医療機器をいう)を装着したもの※CRT-D |
17 | 人工透析を行うもの(3か月を超えて継続して行っている場合に限る) |
その他の障害 | |
18 | 6月を越えて継続して人工肛門を使用し、かつ、人工膀胱(ストーマの処置を行わないものに限る)を使用しているもの |
19 | 人工肛門を使用し、かつ、尿路の変更処置を行ったもの(人工肛門を使用した状態および尿路の変更を行った状態が6月を越えて継続している場合に限る) |
20 | 人工肛門を使用し、かつ、排尿の機能に障害を残す状態(留置カテーテルの使用または自己導尿〔カテーテルを用いて自ら排尿することをいう〕を常に必要とする状態をいう)にあるもの(人工肛門を使用した状態および排尿の機能に障害を残す状態が6月を越えて継続してい要る場合に限る) |
21 | 脳死状態(脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態をいう)または遷延性植物状態(意識障害により昏睡した状態にあることを言い、当該状態が3月を越えて継続している場合に限る)となったもの |
22 | 人工呼吸器を装着したもの(1月を越えて常時装着している場合に限る) |
障害年金の額改定請求の注意点
額改定請求を行う上で、請求時期以外に注意して頂きたいポイントとして、
◎額改定請求は必ず認められるわけではないこと
◎最悪の場合には、額改定請求を行うことによって等級が下がることもあることを忘れてはならないこと
が挙げられます。
診断書1枚で審査を行われますから、障害状態の悪化している実態について診断書にしっかりと記載してもらうことが求められます。
そのため、以下のようなことを普段から心がけておくとよいと思います。
1.医師に日常生活で困っていること・できないことを詳しく伝えておく。
診断書を作成してもらう上で、日常生活上で困っていることやできないことを伝えておくことは非常に重要になります。
以前はできたけど今はできなくなってしまったこと・症状の悪化に伴って増えた困りごとなどをしっかりと医師に伝えておくことが大切です。
また、以下のような変化があった場合にはその旨も伝えておきましょう。
・単身生活を送っていた方がサポートが必要になったため家族との同居を開始した
・家事代行などの福祉サービスの利用を開始した
・住宅を改修した(バリアフリー化、手すりの設置等)
・グループホーム等施設への入居
もし言葉で伝えるのが苦手であれば、メモにまとめて医師に渡すことで伝えるという手段も有効かと思います。
2.(働いている場合)医師に仕事内容や配慮や援助の内容を詳しく伝えておく
お仕事をしている場合、症状が軽く見られてしまう可能性があるため注意が必要です。
そのため、契約形態や仕事の内容などをしっかりと医師に伝え、診断書に反映して頂くことが必要になります。
また、障害が原因で就労形態に変更があった場合にはその旨も伝えましょう。
例えば、以下のような内容です。
・一般企業を退職し、就労支援事業所に移った
・一般雇用から障害者雇用に変わった
・フルタイムから短時間勤務になった
・無職になった。
また、仕事上の配慮・援助を受け始めたり、配慮・援助が手厚くなったりした場合には、その内容についてもしっかりと診断書に書いてもらうとよいでしょう。
たとえば以下のような内容です。
・公共機関に乗れなくなり、家族の送迎で通勤するようになった。
・体調不良の日には休んだり、午後出勤をしたりできる。
・公共交通機関を使えないのでマイカー勤務の許可を特別に受けた。
・通院休暇を取れるようになった。取得できる日数が増えた。
さらに、仕事上の支障についても可能な限り記載してもらいましょう。例えば以下のようなことです。
・作業の手順をきちんと理解できず、作業を間違ってしまうことが多い。
・顧客対応の際に相手の言葉に集中できずに怒られることが多い。
・杖歩行から車椅子に変わったため、段差を通るときには同僚に押してもらっている。
・トイレを車椅子対応に変更してもらった。
診断書を作成してもらったら~必ず内容を確認~
診断書を作成してもらったら、すぐに年金機構に提出してしまう方も多いようですが、必ず提出前に診断書の内容を確認しましょう。
必要な箇所がすべて埋まっているか、日常生活での支障、仕事の内容や支障などがきちんと記載されているかを確認しましょう。
額改定請求に際しては、請求者自身が作成する「病歴就労状況等申立書」を添付しませんので、日常生活や仕事のこと、障害状態の悪化具合を審査機関に伝えるには診断書にしっかり反映してもらう必要があります。
もし不足している情報や実態と違う情報があった場合には、医師に相談をしてみるもの良いでしょう。
また、次回の額改定請求や更新の際の診断書との比較に使用することが出来るように、コピーを取って保管しておくことをお勧めします。
<診断書が封筒に入っており「緘」等の印鑑が押されている場合>
記載内容の確認のため、開封しても問題はありません。
ただし、がん等の傷病である場合、余命やステージなどの記載がされている場合がありますので、開封にはそれなりの覚悟が必要になるかもしれません。
診断書の提出先は
制度によって、以下のように分かれています。
〇障害基礎年金 → お住いの市区町村役場の国民年金課
〇障害厚生年金 → 年金事務所(日本年金機構)
大切な書類ですので、持参するか、送付する際には追跡が可能な書留等で送付することをお勧めします。
最後に
今回は、障害年金の額改定請求の手順や注意点などについて記載しました。
障害年金の額改定請求は、診断書1枚で障害状態の悪化が障害年金の金額に反映されるかどうかが決まります。
この記事でお読みいただいた内容を参考に、不備のない額改定請求を行ってもらえたら幸いです。
「診断書の内容チェックを一緒にやってほしい」などのご要望がございましたら、ぜひ一度TAMA社労士事務所へご相談ください。額改定請求のお手伝いも障害年金の等級が上位へ変更された場合のみ料金が発生する形で行っています。
(額改定請求の結果、等級が上位等級に変更された場合の報酬は、変更後の年金の1か月分です。等級が上位へ変更されなかった場合には報酬は発生しません。)
安心してご相談ください。
初回の相談は無料です。 ※病院同行や年金事務所での手続き等による外出が多いため、メールでのお問い合わせがオススメです。 |
執筆者プロフィール 玉置 伸哉(社会保険労務士) 1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。 アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。 札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。 2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。 2019年2月、TAMA社労士事務所開業。 障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。 また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。 詳しいプロフィールはこちらから |