呼吸器疾患

この数十年、経済発展とともに進行してきた大気汚染により、呼吸器疾患にかかる方は増加傾向にあると言われています。

ストレス等の原因から喫煙がやめられず、COPD等の呼吸器疾患にかかる方も多くなっているようです。

 

この記事では、そんな呼吸器疾患を患ってしまった場合、どのような状態になったときに障害年金を受給できるのか「障害状態要件」について解説していきます。

この記事の内容は、肺がんにより呼吸器疾患を併発している方も対象となります。

(障害年金の3大要件「初診日要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」の確認はこちらから)

障害認定基準

呼吸器疾患で障害年金を受給する場合の基準として、「国民年金・厚生年金 障害認定基準」(全文はこちら)の呼吸器疾患による障害の基準には以下のように書かれてます。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることがを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

認定要領~認定のされ方~

呼吸疾患の認定は、大きく分けて以下の4つに区分されています。

A.肺結核

B.じん肺

C.呼吸不全

D.気管支喘息(本来は呼吸不全の中に含まれますが、ここでは分けて記載します。)

それぞれについて、見ていきます。

A 肺結核

肺結核による障害の程度は、病状判定および機能判定により認定されます。

肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療および病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況などにより、総合的に認定するものとされています。

病状判定により等級に該当すると認められる状態としては以下のように例示されています。

障害の程度

障害の状態

1級

認定の時期前6月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のⅠ型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの

2級

1.認定の時期前6カ月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるあるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

2.認定の時期前6カ月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

1.認定の時期前6カ月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるあるもので、積極的な抗結核薬による化学療法(少なくとも2剤以上を使用している必要がある。)を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

2.認定の時期前6カ月以内に排菌があり、学会分類のⅣ型であるもので、かつ、労働に制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

肺結核の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定が行われます。

B じん肺

じん肺による障害の程度は、病状判定および機能判定により認定されます。

病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定することとされています。

病状判定により各等級に該当すると認められる状態としては以下のように例示されています。

障害の程度

障害の状態

1級胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが

2級

1.認定の時期前6カ月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるあるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

2.認定の時期前6カ月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

1.認定の時期前6カ月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるあるもので、積極的な抗結核薬による化学療法(少なくとも2剤以上を使用している必要がある。)を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

2.認定の時期前6カ月以内に排菌があり、学会分類のⅣ型であるもので、かつ、労働に制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

じん肺の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定が行われます。

C 呼吸不全

呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態を言います。

認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全です。

慢性呼吸不全を引き起こす疾患としては肺疾患のみに限らず多岐にわたります。

対象疾患の一部として、以下のようなものが挙げられます。

 ・閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎など)

 ・拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺など)

 ・心血管系異常

 ・神経疾患、筋疾患

 ・中枢神経系異常

これらの疾患を含め、呼吸不全により各等級に該当すると認められる状態としては以下のように例示されています。

障害の程度

障害の状態

1級

下記のA表およびB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、下記の一般状態区分表のオに該当するもの

2級

下記のA表およびB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、下記の一般状態区分表のエまたはウに該当するもの

3級

下記のA表およびB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、下記の一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

<A表 動脈血ガス分析値の参考値>※安静時

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

動脈血O2分圧

Torr

70〜61

60〜56

55以下

動脈血CO2分圧

Torr

46〜50

51〜59

60以上

<B表 予測肺活量1秒率の参考値>

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

予測肺活量1秒率

40〜31

30〜21

20以下

<一般状態区分表>

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を加えることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働やざ行はできるもの

例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、二中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

※呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値が優先されますが、その他の検査成績も参考とされ、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定されます。

<在宅酸素療法を施行中の場合>

1.24時間常に在宅酸素療法を施行しており、軽易な労働以外の労働に常に支障があると認められる程度の場合には、3級と認定されます。

※臨床症状や検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、より上位の等級に認定される場合もあります。

2.この場合の障害認定日(障害年金の請求権が発生する日)は、在宅酸素療法を開始した日になります。

※ただし、初診日から1年6ヶ月を経過している場合は除きます。

 

D 慢性気管支喘息

慢性気管支喘息は症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定されます。

各等級に該当すると認められる状態としては以下のように例示されています。

障害の程度

障害の状態

1級

最大限の薬物療法を行なっても発作強度が大発作となり、無症状の期間がなく一般状態区分表のオに該当する場合であって、予測肺活量1秒率が高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの

2級

呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、一般状態区分表のエ又はウに該当する場合であって、プレドニゾロンに換算して1日10mg相当以上の連用、又は5mg相当以上の連用と吸入ステロイド高用量の連用を必要とするもの

3級

喘鳴や呼吸困難を週1回以上認める。日継続的なステロイド薬の使用を必要とする場合があり、一般状態区分表ウ又はイに該当する場合であって、吸入ステロイド中用量以上及び長期管理薬を追加薬として2剤以上の連用を必要とし、かつ、短時間作用性吸入β2刺激薬頓用少なくとも週に1回以上必要とするもの

<この表の注意点>

・表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであることが必要です。

・疾患の性質上、肺機能や血液ガスのみで重症度を弁別されるわけではなく、臨床症状や治療内容を含めて総合的に判定が行われます。

・COPDや肺線維症を併発している場合には「呼吸不全」の基準で判定されます。

呼吸器疾患による申請で気をつけるべき点

①日常生活のことをしっかり医師に伝えましょう。

診断書の記載内容として、自覚症状を記載する欄があります。普段の生活上で感じている自覚症状はしっかりと医師に伝えましょう。

もし、口頭で伝えにくい場合にはメモを渡すなどの方法で伝えるのも有効な手段になるでしょう。

主な自覚症状としては、咳や痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等があります。

また、呼吸不全の程度を6段階(以下参照)で判断する欄も用意されております。普段の生活で自身の状態がどの程度かを医師に伝えてみると良いと思います。もちろん、強制は絶対にしないでください。

<活動能力(呼吸不全)の程度>

・同年齢の健康人と同様に歩行、階段を昇降ができる。

・階段を人並みの速さで登れないが、ゆっくりなら登れる。

・階段をゆっくりでも登れないが、途中休み休みなら登れる。

・人並みの速さで歩くと息苦しくなるが、ゆっくりなら歩ける。

・ゆっくりでも少し歩くと息切れがする。

・息苦しくて身の回りのこともできない。

さらに、気管支喘息の場合には、普段の生活で起こる発作の強度や頻度についてもきちんと医師に伝えるようにしましょう。

<発作の強度>

・大発作:苦しくて動けなく、会話も困難

・中発作:苦しくて横になれなく、会話も苦しい

・小発作:苦しいが横になれる、会話はほぼ普通

・その他(ⅰ.喘息のみ、ⅱ.急ぐと苦しい、ⅲ.急いでも苦しくない)

<発作の頻度>

・1週に5日以上

・1週に3〜4日

・1週に1〜2日

・その他

②病歴就労状況等申立書はしっかりと書く

病歴状況等申立書を作成するときに、私が個人的に大切にしているポイントを挙げていきたいと思います。

ⅰ.日常生活における症状や運動能力は詳細に書く。

呼吸器疾患の場合、呼吸のしづらさが普段の生活にどの程度の支障・制限を与えているかをきちんとまとめることが重要になります。

上記①の内容とも重なりますが、どの程度歩くと息が切れるのか、ゆっくり歩く必要があるのか、息切れのために横になっていなければいけない時間がどの程度あるのか、などの日常生活上の支障をしっかりと書きましょう。

また、喘息の場合にはどのような発作が起こるのか、その頻度がどれくらいなのか、使用している薬剤、薬剤を使用してなおどの程度の症状があるのか、などをしっかりと書くと良いでしょう。

ⅱ.仕事への影響もしっかりと書きましょう。

呼吸器疾患を抱えながら仕事をしている場合、職場からの配慮や同僚からのサポートについてしっかりと記載しましょう。

職場からの配慮の例としては、体を動かす作業から事務作業への転換などが挙げられます。

同僚からのサポートの例としては、体を動かす作業を代わりにやってくれる、送り迎えをしてくれる、などが挙げられます。

また、呼吸器疾患を理由に退職を余儀なくされたり、軽作業へ転職した等の事情があれば、記載すると良いでしょう。

ⅲ.最も重要なのは診断書との整合性

どの疾患にも言えることですが、診断書との整合性が重要です。

どんなに病歴就労状況等申立書で重たい症状を記載しても、診断書とズレていれば、認められない可能性が高いでしょう。

ですから、診断書の内容と病歴就労状況等申立書の内容を照らし合わせて、しっかりと確認する必要があります。

実際に日常生活に起こっている支障と診断書の記載内容との間に相違がある場合には、診断書を作成した医師に相談する等の対応が必要になるでしょう。

最後に

呼吸器疾患で障害年金を申請する場合、お手持ちの検査数値を上記の表と見比べていただければ、ある程度は障害年金をもらえる可能性を予想することができるのではないかと思います。

ただし、臨床症状や日常生活における活動能力等を総合的に見て、障害年金を支給するべき状態かどうかの判断(審査)がなされます。

診断書、病歴就労状況等申立書の全体をしっかりと確認し、きちんと審査機関に判断材料を伝えることが重要です。

 

こちらの内容をお読みいただいた方で、「初診日が見つからない」「病歴就労状況等申立書づくりが不安」「仕事があるので年金事務所になかなか行けない」等のお悩みがございましたら、ぜひ一度、北海道障害年金相談センターにご相談いただければと思います。

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執筆者プロフィール

玉置 伸哉(社会保険労務士)

1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。

アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。

札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。

2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。

2019年2月、北海道障害年金相談センター開設。(TAMA社労士事務所開業)

障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。

また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。

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