障害年金を受給できる状態とは(線維筋痛症の場合)
では、線維筋痛症の場合には、どのような状態になったときに障害年金がもらえるのかを見ていきます。
もくじ
認定の基準
線維筋痛症の障害年金認定は「肢体の障害」の基準に則って審査が行われます。
「国民年金・厚生年金 障害認定基準」(全文はこちら)に書かれている肢体の障害の基準を、線維筋痛症に合わせる形で書くと以下のようになります。
障害の程度 | |
1級 | 線維筋痛症による全身の痛みにより、長期の安静を必要とし、日常生活の用を弁ずることが不能である状態 |
2級 | 線維筋痛症による全身の痛みにより、長期の安静を必要とし、日常生活に著しい制限ある状態 |
3級 |
|
障害手当金 | 線維筋痛症による全身の痛みにより、労働に制限がある状態 (症状が固定していない場合には、障害厚生年金の3級に該当) |
線維筋痛症の重症度分類(ステージ)との比較
線維筋痛症は、厚生労働省の「重症度分類試案」により、ステージⅠ(軽度)~ステージⅤ(重度)の5段階に分類がされています。
重症度分類 | QOL | |
ステージⅠ | ACR診断基準の18か所の圧痛点のうち11か所以上で痛みがあるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない。 | 痛みはあるが普通の生活ができる |
ステージⅡ | 手足の指など末端部に痛みが広がり、不眠、不安感、うつ状態が続く。日常生活が困難。 | |
ステージⅢ | 激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難。 | 痛みのため普通の生活が困難 |
ステージⅣ | 痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきり状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない。 | 寝たきりで あるが眠れない |
ステージⅤ | 激しい全身の痛みとともに、膀胱や直腸の障害、口の渇き、目の乾燥など全身に症状がでる。通常の日常生活は不可能。 |
明示はされていませんが、これまでの経験上、
ステージⅡ~Ⅲが3級相当
ステージⅢ~Ⅳが2級相当
ステージⅤが1級相当
と判断されることが多いと感じています。
線維筋痛症の申請で気をつけるべき点
①診断書の種類は120号-3「肢体の障害用」を使う!
線維筋痛症の障害年金認定は「肢体の障害」の基準に則って審査が行われますので、使用する診断書は「肢体の障害用」です。
※120号‐7「その他の障害用」と勘違いされている方が多いようですので、お気をつけください。
②ステージを必ず診断書内に記載してもらう!
ステージの記載がない場合、書類が返戻されてしまう可能性が高いです。
それ以前に年金事務所の窓口で受け取ってもらえない場合があります。
運よく審査に進んだとしても、「障害年金の請求にかかる照会について」が届き、医師にステージを書いてもらうよう指示される場合がほとんどです。
③症状がはっきりと出ている状態を記載してもらう!
どの傷病でも同様のことが言えますが、症状が落ち着いている時のことを診断書に記載して頂いても、真の病状が審査する人のもとに届きません。
特に線維筋痛症の方は、病状がはっきりと出ている時には通院が難しく、症状が落ちついている時に病院へ行っていることが多いため、医師にきちんと日常生活上・仕事上の支障が伝わっていないことがよくあります。
そのまま診断書を記載してもらっても、症状が現れた時の病状が反映されない可能性があるのです。
ですから、日ごろから症状がはっきりと表れてる時の状態(できないこと、困っていることなど)を医師にきちんと伝えておき、真の症状を診断書に反映して頂くことが重要です。
もちろん、真実だけを伝えること(嘘はつかないこと)は忘れないでください。
ネックになるのは初診日
線維筋痛症が多くの人に知られる病名になったのはここ数年の間だと思います。
レディー・ガガさんが線維筋痛症罹患を公表される以前は、病名すら知らない人が大多数だったのではないでしょうか。
数年前まで、診断・治療に携わる医療機関も決して多くありませんでした。
そのため、現在「線維筋痛症」と診断されて治療を行っている方の中には、様々の医療機関で様々な検査を受けるも「原因不明」とされ続けた病歴をお持ちの方が多くいらっしゃいます。
そんな方が障害年金の請求を行うとき、ネックになるのが初診日です。
では、原因不明で色々な医療機関を転々としてきた方の初診日はいつになるでしょうか?
日本年金機構が令和3年8月に「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」という文書を出しています。
こちらの文書では、線維筋痛症の初診日は次のように判断するとされています。
請求者からの提出書類をもとに請求者本人が申し立てた初診日に受けた診療が線維筋痛症と関連する診療なのかを判断 ↓関連ありの場合↓ 請求者本人が申し立てた初診日が線維筋痛症に関わる一連の診療のうち初めての診療として認めることが出来るかを判断 ↓認めることが出来る↓ 請求者が申し立てた初診日を初診日として扱う |
さらに、具体的には次の①から③までのすべてに該当する場合に、請求者本人が申し立てる初診日(以下「申立初診日」と言います)を初診日として扱うとされています。
①申立初診日の時点で受診した医療機関が作成する診断書または受診状況等証明書の記載内容から、申立初診日において請求者が線維筋痛症の症状と認めることのできる症状で診療を受けていたと認められること。 例えば、身体の広範囲に及ぶ慢性疼痛について診療を受けていたものと認められる場合など。 ②提出された診断書において、申立初診日が線維筋痛症により初めて医師の診療を受けた日として記載されていること。 ③発症直後に確定診断が行われなかった理由に関する申立てが行われていること。 (線維筋痛症に関連する医療機関受診に未継続期間がある場合についての記載もありますが、ここでは省略します。) ※もちろん上記の①から③のすべてに該当しない場合であっても、個別事例ごとの事情を総合的に考慮して初診日を判断する旨も書かれています。 |
①申立初診日に受診した医療機関が作成する診断書または受診状況等証明書の記載内容から、申立初診日において請求者が線維筋痛症の症状と認めることのできる症状で診療を受けていたと認められること。例えば、身体の広範囲に及ぶ慢性疼痛について診療を受けていたものと認められる場合など。
②提出された診断書において、申立初診日が線維筋痛症により初めて医師の診療を受けた日として記載されていること。
③発症直後に確定診断が行われなかった理由に関する申立てが行われていること。
(線維筋痛症に関連する医療機関受診に未継続期間がある場合についての記載もありますが、ここでは省略します。)
※もちろん上記の①から③のすべてに該当しない場合であっても、個別事例ごとの事情を総合的に考慮して初診日を判断する旨も書かれています。
ここから分かることは、初診日の判断は非常に難しく、医療機関から発行される書類を実際に見てみるまで分からないということです。
もっと正直に言うと、書類を提出して実際に審査を受けてみないと分からないケースもかなり多いです。
ただ、分からないとはいえ、診断書や受診状況等証明書をしっかりと読んで初診日になりそうな時期を特定し、どこを初診日として申し立てるのかをしっかり考える必要があります。
例えば、疼痛が出始めた頃には厚生年金に加入していたが疼痛が原因で退職を余儀なくされ、確定診断が下った時には国民年金だったという方も少ないと思います。
この場合、疼痛が出始めた頃が初診日として認められれば障害厚生年金を請求することが出来ます。
障害等級の3級は障害厚生年金のみですし、2級以上になれば報酬比例の年金が上乗せされますので、もし私が当事者で障害厚生年金を請求できる可能性があるのならチャレンジしたいと考えると思います。
なので、これから線維筋痛症で障害年金の請求を行われる方には、医療機関から発行してもらった書類は可能な限りしっかりと読みこみ、上記の日本年金機構の審査に関する書類等と見比べて、どのように申し立てるかについて、しっかりと考えてほしいと思います。
治療を行っている医療機関
もし線維筋痛症の治療を行っている医療機関をお探しの方がいらっしゃいましたら、一部ですが以下のサイトで紹介されています。ご確認いただければと思います。
一般社団法人日本線維筋痛症学会
http://jcfi.jp/network/network_map/index.html
最後に
線維筋痛症での障害年金請求は数年前まで社労士にとっても「非常に難しい」とされる案件でした。しかし、請求事例を重ねる中で、どのような点を診断書で書いてもらう必要があるのか(例えば、ステージを必ず記載してもらう等)などの注意点が見えてきました。
まだ、審査において初診日がどのように判断されるかについては事例を重ねていき研究していく必要があると感じています。
業務の中で得られた情報については、当事務所にご依頼くださった方の請求手続きに活かしていきたいと思います。
併せて、こちらのホームページ等で発信していきたいと思います。
「自分の場合はどうだろう?」「初診日の特定で苦戦している」等のお悩みがございましたら、ぜひ一度、TAMA社労士事務所にご相談いただければと思います。
初回のご相談は無料です。
また、着手金1万円、医療機関に支払う診断書等の作成料(実費)、住民票等の取得料金(実費)以外は成果報酬制(ご相談者様が障害年金を受給できた場合のみ料金が発生する形)になっています。
安心してご相談ください。
執筆者プロフィール
1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。 アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。 札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。 2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。 2019年2月、TAMA社労士事務所開業。 障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。 また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。 詳しいプロフィールはこちらから |