心疾患近年、食生活の欧米化などが原因となり、心臓疾患の罹患者が増加傾向にあると言われています。

最近の調査では、日本人のうち約170万人が何らかの心臓疾患で継続的な治療を受けているとの結果が出ています。

 

この記事では、そんな心疾患を患ってしまった場合、どのような状態になったときに障害年金を受給できるのか「障害状態要件」について解説していきます。

(障害年金の3大要件「初診日要件」「保険料納付要件」「障害状態要件」の確認はこちらから)

障害認定基準

心臓疾患で障害年金を受給する場合の基準として、「国民年金・厚生年金 障害認定基準」(全文はこちら)の循環器疾患による障害の基準には以下のように書かれてます。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることがを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

認定要領~認定のされ方~

心疾患の認定は、大きく分けて2つにわけることが出来ます。

1つは、「ペースメーカーの装着=3級」のように原則的に等級が決まっているもの。

もう1つは、検査数値等で等級が判定されるものです。

1.原則的に等級が決まっているもの

以下の表のように、等級が決められています。

等級状態
1級

・心臓移植をした

・人工心臓を置換した

2級

・CRT(心臓再同期医療機器)を装着した

・CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)を装着した

3級

・人工弁を置換したもの

・心臓ペースメーカーを装着した

・ICDを装着した

・人工血管を挿入した(但し、一般状態区分がイまたはウの場合に限る)※ステントグラフトも含む。

もちろん、この表に書かれている状態であって、症状が重症化している場合には、より上位の等級に該当する場合もあります。

また、この表の状態に該当した場合には、初診日から1年6か月経過するのを待つ必要がなくなります。

表の状態に至った日に障害年金の請求権が発生します。(すでに1年6か月を経過している場合を除きます。)

 

2.検査数値等で等級が判定されるもの

上の表に該当するものが無い場合には、検査の数値により等級が判定されることになります。

等級判定の基準は、疾患ごとに5つに分けられています。

弁疾患

心筋疾患

虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)

難治性不整脈

大動脈疾患

まずは等級判定基準で使われる検査の内容を確認

それぞれの基準を説明する前に、5つすべての基準で使用される3つの項目をご紹介します。

これらの項目からご自身に当てはまるものをご確認の上、各疾患ごとの基準をご覧いただければと思います。

<異常検査所見>

区分

異常検査所見

A

安静時の心電図において0.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰性T波(aVR誘導を除く。)の所見のあるもの

B

負荷心電図(6Mets未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの

C

胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの

D

心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの

E

心電図で、重症な頻脈性または徐脈性不整脈所見のあるもの

F

左室駆出率(EF)40%以下のもの

G

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を越えるもの

H

重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、あるいは、3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの

I

心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの

<一般状態区分および身体活動能力>

区分

一般状態

身体活動能力

無症状で社会活動ができ、制限を加えることなく、発病前と同等にふるまえるもの

6Mets以上

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働やざ行はできるもの

例えば、軽い家事、事務など

4Mets以上6Mets未満

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

3Mets以上4Mets未満

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、二中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

2Mets以上3Mets未満

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

2Mets未満

※「Mets」とは、安静時の酸素摂取量を1Metsとして、活動時の酸素摂取量が安静時の何倍かを示す指標です。

<臨床所見>

 自覚症状胸の痛み、動悸、呼吸困難、息切れ、失神、咳など
 他覚所見浮腫、チアノーゼ、ばち状指、尿量減少など

では、5つの疾患ごとに基準を見ていきましょう。

①弁疾患
障害の程度障害の状態
1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 人工弁を装着述語、6か月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 人工弁を装着したもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

※複数の人工弁置換術を受けている場合でも、原則3級相当と認定されます。

※抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き認定の対象とされません。

②心筋疾患
障害の程度障害の状態
1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見のFに加えて、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見および心不全の病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 EF値が50%以下を示し、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイまたはウに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

※肥大型心筋症は、心室の収縮は良好に保たれるが、心筋肥大による心室拡張機能障害や左室流出路狭窄に伴う左室流出路圧較差などが病態の基本となっている。したがってEF値が障害認定に当たり、参考とならないことが多く、臨床所見や心電図所見、胸部X線検査、心臓エコー検査所見なども参考として総合的に障害等級を判断する。

③虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
障害の程度障害の状態
1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全あるいは狭心症状を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

異常検査所見が2つ以上、かつ、軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状をあらわし、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

異常検査所見が1つ、かつ、心不全あるいは狭心症などの症状が1つ以上あるもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

※冠動脈疾患とは、主要冠動脈に少なくとも1ヵ所の有意狭窄をもつ、あるいは、冠攣縮が証明されたものを言い、冠動脈造営が施行されていなくとも心電図、心エコー図、核医学検査等で明らかに冠動脈疾患と考えられるものを含む。

④難治性不整脈
障害の程度障害の状態
1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見のEがあり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 ペースメーカー、ICDを装着したもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

※難治性不整脈とは、放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で、適切な治療を受けているにも拘わらず、それが改善しないものを言います。

※心房細動は、一般的に加齢とともに漸増する不整脈であり、それのみでは認定の対象とはなりませんが、心不全を合併したり、ペースメーカーの装着を要する場合には認定の対象とされます。

⑤大動脈疾患
障害の程度障害の状態
3級

1 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤(胸腹部大動脈瘤を含む)により、人工血管(ステントグラフトと含む)を挿入し、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

2 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

※Stanford分類A型:上行大動脈に解離があるもの。Stanford分類B型:上行大動脈まで乖離が及んでいないもの。

※大動脈瘤とは、大動脈の一部がのう状又は紡錘状に拡張した状態で、先天性大動脈疾患や動脈硬化(アテローム硬化)、膠原病などが原因となります。これのみでは認定の対象となりませんが、原疾患尾活動性や手術による合併症が見られる場合には、総合的に判断されます。

大動脈瘤の定義は、のう状のものは大きさを問わず、紡錘状のものは、正常時(2.5~3㎝)の1.5倍以上のものをとされています。(2倍以上のものは手術が必要とされています。)

※難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3役以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140mmHg以上又は拡張期血圧が90mmHg以上のものを言います。

※大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はあるが、完全治癒を望める疾患ではないため、一般的には1・2級には該当しないが、本傷病に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定されます。

心疾患による申請で気をつけるべき点

①日常生活のことをしっかり医師に伝えましょう。

診断書の記載内容として、自覚症状を記載する欄があります。普段の生活上で感じている自覚症状はしっかりと医師に伝えましょう。

主な自覚症状としては、動悸や呼吸困難、胸の痛み、労作時の息切れ、指針等があります。

もし、口頭で伝えにくい場合にはメモを渡すなどの方法で伝えるのも有効な手段になるでしょう。

②病歴就労状況等申立書はしっかりと書く

病歴状況等申立書を作成するときに、私が個人的に大切にしているポイントを挙げていきたいと思います。

ⅰ.日常生活における症状や運動能力は詳細に書く。

心疾患の場合、その疾患によって普段の生活がどの程度の支障・制限を受けているかをきちんとまとめることが重要になります。

上記①の内容とも重なりますが、どのような動作で息切れや胸の痛み等の症状があらわれるのか、心疾患の症状のために横になっていなければいけない時間がどの程度あるのか、などの日常生活上の支障をしっかりと書きましょう。

ⅱ.仕事への影響もしっかりと書きましょう。

心疾患を抱えながら仕事をしている場合、職場からの配慮や同僚からのサポートについてしっかりと記載しましょう。

職場からの配慮の例としては、体を動かす作業から事務作業への転換、重たいものは同僚が運んでくれる、階段移動をしなくてもよいフロアへの移動などが挙げられます。

同僚からのサポートの例としては、送り迎えをしてくれる、外出を伴う仕事を代わってくれるなどが挙げられます。

また、心疾患を理由に退職を余儀なくされたり、軽作業へ転職した等の事情があれば、記載すると良いでしょう。

ⅲ.最も重要なのは診断書との整合性

どの疾患にも言えることですが、診断書との整合性が重要です。

どんなに病歴就労状況等申立書で重たい症状を記載しても、診断書とズレていれば、認められない可能性が高いでしょう。

ですから、診断書の内容と病歴就労状況等申立書の内容を照らし合わせて、しっかりと確認する必要があります。

実際に日常生活に起こっている支障と診断書の記載内容との間に相違がある場合には、診断書を作成した医師に相談する等の対応が必要になるでしょう。

最後に

心臓疾患で障害年金を申請する場合、検査所見や臨床症状、日常生活における活動能力等を総合的に見て、障害年金を支給するべき状態かどうかの判断(審査)がなされます。

診断書、病歴就労状況等申立書の全体をしっかりと確認し、きちんと審査機関に判断材料を伝えることが重要です。

 

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執筆者プロフィール

玉置 伸哉(社会保険労務士)

1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。

アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。

札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。

2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。

2019年2月、北海道障害年金相談センター開設。(TAMA社労士事務所開業)

障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。

また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。

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