障害厚生年金と傷病手当金(健康保険)の併給調整

けがや病気で仕事ができない状態になった時に受給できる補償として障害年金の他に、健康保険の傷病手当金があります。

どちらも仕事ができない間の補償として、欠かせない制度だと思います。

 

一つの傷病によりこれら2つの制度を利用しようとすると、受給できる期間が重複する場合があります。

では、受給期間が重複した場合、一つの傷病で障害厚生年金の傷病手当金と障害年金は両方を同時に満額もらえるのでしょうか?

 

よくいただく質問ですので、この点について書いていきます。

健康保険の傷病手当金とは

まずは、健康保険の傷病手当金について簡単に確認します。

この制度は、健康保険の被保険者がけがや病気の療養のために仕事ができない時に支給されるものです。

支給される期間は、療養のために仕事ができなくなった日から連続した休業3日間(待機期間)が経過した日からとなります。

その支給期間は、初めて傷病手当金を受給した日から1年6ヶ月です。

 

障害年金の請求権発生は初診日から1年6ヶ月が経過した日ですから、傷病手当金の受給期間が終わるのとほぼ同時期に請求権が生まれることになります。

ただ、特に精神疾患等ですと、初診日と同時に傷病手当金を受給開始する方は多くはおらず、障害年金の請求が可能な1年6ヶ月経過時に傷病手当金の受給期間が残っていることもよく起こり得ます。

重複した期間は傷病手当金が不支給

では、一つの傷病で両方を受給できる場合、どのようになるのか?

答えは、傷病手当金が不支給となります

 

ただし、障害厚生年金の金額(1・2級の場合は障害基礎年金との合算額)を360で割った金額が、傷病手当金の日額より少ない場合、その差額が傷病手当金として支給されます。

障害厚生年金と傷病手当金

また、障害手当金(一時金)と重複した場合、傷病手当金は全額不支給になります。不支給となる期間は、障害手当金を受給しなかったと仮定した時に受給できた傷病手当金の金額が障害手当金の額に達するまでの期間となります。

傷病手当金と障害手当金

忘れてはいけないのは遡って障害厚生年金を受給した場合。

過去に同一傷病で傷病手当金を受給していた期間と、さかのぼって障害厚生年金を受給することが決定した期間が重複する場合にもこちらの調整は行われます。

この場合、過去に受給していた傷病手当金のうち障害厚生年金を受給していたとしたら受給できなかった部分を返還しなくてはなりません

※障害厚生年金受給後、返還額が通知されます。通知されるまでに使ってしまわないよう注意が必要です。

 

重複させない方が良い?

答えはNOです。

この内容をお読みになった傷病手当金を受給中の方で「どうせ傷病手当金が不支給(減額)になるなら、傷病手当金をもらい切ってから障害年金の請求をしよう」と思われた方もいるかもしれません。

ですが、障害年金の受給までには、診断書を作成してもらう時間や病歴就労状況等申立書を自身で作成する時間、そして何よりも審査期間(およそ3ヶ月)がかかります

傷病手当金が終了してから請求を行った場合には、障害年金の受給までに空白の期間ができてしまうことになるのです。

ですので、多少傷病手当金が不支給(もしくは減額)になる期間があったとしても、障害年金の請求は早めに行うことをお勧め致します。

 

最後に

障害年金を含め、障害を負った時に受けられる補償の制度はいくつか存在します。

でも、必要以上に手厚くにならないように、目的が重複するものはうまく調整されるように作られています。

また、それぞれに受給開始時期や受給できる期間が異なるため、どのように受給をすれば切れ目なく補償を受けて生活を安定させられるかを考える必要があります。

 

ちなみに、障害基礎年金のみを受給されている方が同一傷病が悪化して傷病手当金を受給する場合は、こちらの記事で紹介した調整は行われません。

 

「自分の場合はどうだろう?」「どのようにやれば良いだろう?」と思われた方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

初回のご相談は無料です。

また、着手金1万円、医療機関に支払う診断書等の作成料(実費)、住民票等の取得料金(実費)以外は成功報酬制(ご相談者様が障害年金を受給できた場合のみ料金が発生する形)になっています。

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執筆者プロフィール

玉置 伸哉(社会保険労務士)

1982年生。八雲町生まれ旭川市育ちの生粋の道産子。

アルバイト時代の仲間が、就職した会社でパワハラ・セクハラ・給与未払いなどの仕打ちを受けた挙句に身体を壊したことをきっかけに社会保険労務士を目指す。

札幌市内の社会保険労務士事務所で7年間従事、うち6年間を障害年金の相談専門の職員として経験を積み2018年4月に退職。

2018年8月に社労士試験を受験(6回目)し、同年11月に合格。

2019年2月、TAMA社労士事務所開業。

障害年金に特化した社会保険労務士として、障害年金請求のサポートを日々行っております。

また、就労支援事業所様等において「30分でざっくり覚える障害年金講座」「障害年金出張相談会」を積極的に行っています。